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ウィーン・フィルハーモニー東日本大震災復興支援チャリティコンサート@サントリーホール(10月18日)

モーツァルト:ピアノ協奏曲 イ長調 K488から第2楽章
(ピアノ:クリストフ・エッシェンバッハ)
マーラー:『少年の魔法の角笛』から
(バリトン:マティアス・ゲルネ)
シューベルト:交響曲第7番 ロ短調 D759「未完成」


初めてのウィーン・フィル体験。
ウィーン・フィルの来日コンサートなど私には高嶺の花(高値の花ともいう)で、生涯行くことはないだろうと思っていました。ところが、東日本大震災チャリティコンサートとして開かれた18日のマチネ公演は、なんと全席1万円。3日前に知り、だめもとでホールに電話したら、まだ空いていた! LCという今まで買ったことのないような良席で、憧れのウィーン・フィルが聴けるなんて♪ しかもモーツァルトのピアノ協奏曲では、なんとエッシェンバッハの弾き振り姿が見られるのです。ピアニスト・エッシェンバッハのファンには夢のよう……

「ピアノ協奏曲第23番」は、一昨年のパリ管とのエッシェンバッハ70歳のバースデーコンサートでも披露された曲。今日演奏された第2楽章は、震災の犠牲者に捧げられるということで、悲哀の色がいっそう濃厚に感じられました。テンポはより遅く、弱音はより弱く……まるでかすかなため息のようなピアノ。それを慰めるかのようなやさしい木管の響き、その美しさになおさら涙を誘われます。最後の弦のピチカートは去りゆく人の足音のよう。……自分もいつか去りゆく側になるのだ……そんなことを突然悟ってしまうほど、深い演奏でした。演奏後の拍手は控えられ、舞台上の奏者と客席の全員が立ち上がって1分間の黙祷を捧げました。

「少年の魔法の角笛」を聴くのははじめてです。演奏されたのは「ラインの伝説」「麗しきトランペットが鳴り響くのは」「原光」の3曲。こんなに神々しく美しい曲だったのですね。ゲルネさんの驚くほどまろやかな声、艶やかでそこはかとなく退廃の香りがするオーケストラの演奏にうっとり。

そして最後の「未完成」。超有名曲すぎて、かえって演奏会で聴く機会のなかった作品。なんといえばいいんでしょう。感動というより、驚きで言葉がありません。こんなに壮絶な曲だったなんて……。

なんとも濃密な1時間でした。エッシェンバッハとウィーン・フィルが追悼の祈りのために選んだのは、みごとに死の淵をかいま見せるような曲ばかりでした。「死」から目をそむけているところには、「希望」も「復興」も生まれない。そんなことを教えてくれたような気がします。ありがとう、ウィーン・フィル。ありがとう、エッシェンバッハ。
by AngeBleu | 2011-10-19 21:03 | 音楽