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ポンピドゥーセンター『ムンク~現代の眼』

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パリの国立近代美術館ポンピドゥーセンターで、エドヴァルド・ムンク展を開催中です。「20世紀以降の芸術を取り上げるポンピドゥーセンターでなぜムンク?」と思われるかもしれません。ムンクといえば、なんといっても『叫び』の画家。世紀末の不安を描いた象徴主義の画家というイメージがあります。しかし実のところ、ムンクが亡くなったのは1944年(モンドリアンやカンディンスキーと同じ)。その作品の多くは20世紀に制作されたのです。この展覧会は、ムンクを20世紀の現代画家としてとらえなおそうとするもの。今まであまり注目されることのなかったこの画家の前衛的な面をさまざまな角度から紹介しています。さすが、ポンピドゥーセンターの企画展。展示室を進むごとに、はっとさせられるような仕掛けがあり、すごく興奮しました。

意外にもムンクは最新のテクノロジーにとても関心をもっていたようです。たとえば、写真。この展覧会では珍しいムンクの写真作品を見ることができます。写真の影響から生まれた絵画作品も多く、有名な『赤い蔓草』もそのひとつ。あの奇妙な構図(前景に人物の正面像が肩から上だけ描かれている)、たしかに写真の構図そのものです。

映画に影響を受けたと思われる作品もあります。『家路につく労働者たち』は、まるでリュミールの最初の映画「工場の出口」を見ているよう。この絵からは、社会主義思想が輝いて見えた時代の雰囲気も感じられます。ひたすら自己の内面だけを見続けた画家……というイメージとはうらはらに、ムンクのまなざしは外の世界にもしっかり向けられていたのです。

私が最も心惹かれたのは、展覧会のポスターにもなっている『星月夜』など、ゴッホ?マティス?と見まがうような、鮮やかな色彩の作品群。ゴッホやマティスよりももっと透明感があり、叙情的でメランコリックで……。ムンクが希有な色彩画家だったことに気付かされました。

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地上階の書店では、関連書籍が各種売られています。

「ムンク~現代の眼」展は、2012年1月9日まで。年末年始の旅行でパリに行かれる方は必見です。多くの美術館が閉館する12月25日と1月1日も開いていますので、是非!

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ポンピドゥーセンターは、パリの街を眺める隠れた名所でもあります。夕景、夜景は特にきれい。エッフェル塔のキラキラも見えますよ。

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夜になるとますます活気づくポンピドゥーセンター。
by AngeBleu | 2011-12-14 21:47 | 美術・アート