2012年 04月 16日
クン・ウー・パイクのベートーヴェン(2012年4月13日@トッパンホール)
ブラームス:主題と変奏 [原曲:弦楽六重奏曲第1番 Op.18より 第2楽章]
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ブラームス:3つの間奏曲 Op.117より 第1番 変ホ長調
ブラームス:8つの小品 Op.76より 第1番〈奇想曲〉 嬰ヘ短調
ブラームス:6つの小品 Op.118より 第2番〈間奏曲〉 イ長調
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 Op.111
T君に誘われて、韓国人ピアニスト、クン・ウー・パイクの演奏会に行ってきました。ベートーヴェンのピアノ・ソナタにブラームスの小品を挟むという、渋~いプログラム。ベートーヴェンのピアノ・ソナタで表題のついていないのってどうも難解でとらえどころがないイメージなんですよね~。私について行けるかな……と心配しつつ出かけたのですが……
冒頭のピアノ・ソナタ第16番から、心奪われました。あたたかくやさしさに満ちた、そして独特の粘りけのある音。しつこいくらい濃厚なブラームス。音が次々と流れて消えていくのではなく、弾かれた音がすべて残って、そのままひとつの宇宙を作り上げているようです。
圧巻は最後の32番のソナタ。第1楽章の身の毛もよだつような低音の打鍵……、第2楽章の瞑想的世界。“崇高”とはこういうことなんだとはじめて知りました。クン・ウー・パイクがすごいのか、ベートーヴェンがすごいのか(両方ですね)。
若いピアニストの才気あふれるキラキラした演奏を好んで聴く私ですが、クン・ウー・パイクのピアノはそういう刹那的な感覚の喜びなどとは対極にあるもの。打ちのめされたような気分で、終演後はしばし呆然としてしまいました。韓国を代表するピアニストでありながら、なぜか来日の機会は少ないとのこと。CDでは決して再現できないであろう、あの壮大な世界をまた味わってみたいです。
★ディスク紹介
バッハ/ブゾーニ:トランスクリプションズ