Trans Europe Express


フランス、ドイツなどヨーロッパの旅の話題を中心に、映画、音楽、ダンス、アート鑑賞記録も。
by AngeBleu
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ロパートキナ『白鳥の湖』

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11月27日のマリインスキー・バレエ『白鳥の湖』を観てきました。あこがれのロパートキナの白鳥。言葉では言い尽くせない至高の美の世界を観た気がします。月明かりの下、静かに舞台にあらわれたオデットを見た瞬間から、涙があふれてきました。すべてが物語の自然な流れの中にあり、演技など何もしていないように見えるのに、オデットの微妙な心の動きが手に取るように伝わってくる不思議。王子のダニーラ・コルスンツェフも素敵でした。控えめでありながら、限りないやさしさと包容力でオデットを包み込む王子。オデットの氷のような心が溶かされ、ふたりの心が少しずつ通いあっていくパ・ド・ドゥは、ただ美しいだけでなく、何か時を超えた永遠なるものを見るようでした。

そして、第2幕の黒鳥。テクニック面でいえば、この日のロパートキナは決して万全とはいえなかったかもしれません。もっと迫力ある黒鳥を踊る人はいくらでもいるでしょう。でも、彼女の黒鳥はやはり非常に自然で、この物語に初めて納得できました。私はかねがね不思議に思っていました。いくら顔が似ているからといって、王子が間違えて黒鳥に愛を誓ってしまうなんておかしいんじゃないかと。どんなに美しく妖艶でも、心に少しでも下劣なところがあれば、王子が惑わされることはないはず。ロパートキナの黒鳥は、もちろん悪なんだけど下劣さのかけらもなく、悪の中にも品位というか気高さがありました。この黒鳥なら、王子がだまされるのも無理はないと思わされたのです。

11月1日の朝日新聞に掲載されたロパートキナのインタビューを、ネットでも読むことができます。
http://www.asahi.com/showbiz/stage/theater/TKY200910300315.html

「動きの一つひとつを観客に分析させるようではダンサーとして失格。踊りの流れがシンプルに見えて、心に直接訴えかけるようにすることが、バレエの技術ではないかしら」
「マリインスキーはエレガンスに尽きる。心の中は炎のように燃えても、抑え気味の形を貫く。叫びでなく目線で勝負する。」

ああ、まさにその通りのものを見せていただきました、という感じです。「踊りの流れがシンプルに見えて、心に直接訴えかける」。言うのは簡単でも、それを実現できるダンサーはなかなかいないと思います。でも幸運にしてそんな舞台を観たとき、私たちはこの世に奇跡があることに驚き、生きていることに感謝しないではいられなくなります。ロパートキナの白鳥を生で観ることができたのは本当に幸せなことでした。
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by AngeBleu | 2009-11-29 19:11 | バレエ

孤高の宝石、ウリヤーナ・ロパートキナ

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11月23日の『ブル8』で、今年のクラシック演奏会は終わりと書いたのですが、オーケストラではなくバレエ公演でもうひとつビッグイベントが残っています。明日27日の、マリインスキー・バレエ『白鳥の湖』です。オデット/オディールは、ウリヤーナ・ロパートキナ。ずっと憧れていたのですが、なぜか縁がなく、今まで彼女の白鳥を観ることができないでいました。

3年前の「ロパートキナ・ガラ」を観て以来、崇高とでもいいたくなるようなロパートキナの姿が今も心に焼き付いています。(この年も『白鳥』のチケットを取っていたのですが、急な出張で泣く泣く手放したのです)・・・・・・ガラの演目は、たしか『パキータ』『ライモンダ』『ダイヤモンド』でした。最後の『ダイヤモンド』がすごかった。『ダイヤモンド』は、バランシンの『ジュエルズ』の第3部で、バレエコンサートでよく上演される作品ですが、一度もおもしろいと思ったことがありませんでした。ガルニエ宮でパリ・オペラ座バレエの『ジュエルズ』全幕を観たときも、たしかにとてもきれいだけど(特に衣装はクリスチャン・ラクロワだし・・・・・・)、たいしておもしろくないなあ(これで50ユーロって高いわあ)なんて思っていました。

しかし、ロパートキナの『ダイヤモンド』は、今まで観たダイヤモンドとは違いました。同じ音楽、同じ振付・・・・・・なのにまったく違う。なんなんでしょう、これは!? 今までは模造ダイヤしか見てなかったんだと思いました(パリ・オペラ座の皆さん、ごめんなさい。ロパートキナが素晴らしすぎたのです)。ロパートキナは、単に華やかでキラキラと輝いているだけではなく、宝石の女王としての気品をもち、一目見るだけでこちらの心まで研ぎ澄まされるような、本物のダイヤモンドでした。「呪いのダイヤ」というものがあるそうですが、王家から王家へ受け継がれてきた伝説の石ってこんな感じなのかも? そんな孤高の宝石、ロパートキナにいよいよ明日会えると思うと、今から震えるほど楽しみなのです。

ジャパン・アーツのサイト内のマリインスキー・バレエの特集ページはこちら
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by AngeBleu | 2009-11-26 20:51 | バレエ

ブロムシュテット&チェコ・フィル『ブルックナー8番』(11月23日@サントリーホール)

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮チェコ・フィルハーモニーのブルックナー『交響曲第8番』の演奏会に行きました。ブロムシュテットさんのブルックナー、一度生で聴いてみたかったんです。期待どおり……というか期待以上のすばらしい演奏で、ラストは涙が出るほど感動、興奮しました。

N響アワーでよくお見かけするので、初めてという気がしないブロムシュテットさん。いつもながら、80歳を超えているとは思えない、溌剌とした指揮ぶりに見惚れてしまいました(指揮者の表情がよく見えるLAブロックだった)。巨匠というより、今まさに油の乗り切った壮年の指揮者という感じ。チェコ・フィルについては何も予備知識がなかったのですが、野性的な力強さがある、とてもいいオーケストラでした。重量感ある低弦部にしびれ、管楽器も(特にフルート)、ティンパニもよかった。ところどころアンサンブルが崩れたような部分もあったけれど、そんなの些細なことだと思えるくらい、スケールの大きな立派な演奏でした。特に3楽章終盤から終楽章は圧巻。フィナーレに向けての疾走感、高揚感がたまらなかったです。

客席の一体感もすばらしくて、演奏中はこれ以上ないほどの静寂、演奏後の拍手は熱くいつまでも鳴り止まず……、それもまた感動的で、ほんのりあたたかな心で帰路につきました。やっぱり生の演奏会、もっと行きたいものだと思いました。残念ながら今年はこれが最後のクラシックの演奏会なのです。でも1年をこのようなすばらしい演奏会で締めくくることができ、本当に幸せでした。
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by AngeBleu | 2009-11-24 23:08 | 音楽

橋本フサヨ×洲永敬子『うせものいづる』

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パントマイマーの橋本フサヨさんの新作公演『うせものいづる』、本日の初日を観てきました。今回の作品は、元新宿梁山泊の洲永敬子さんと組んだふたり芝居。演出は鄭義信さん。引越の日の部屋で起こった数時間の出来事を描いた、心がふわっとあたたかくなるお話です。なくしたものがあることさえ忘れている自分にふと気づいたりもして。会場は、浅草橋の古い民家を改装したギャラリー。隅田川沿いというロケーションも抜群で、このお芝居にふさわしい雰囲気たっぷりの場所でした。

フサヨさんとはじめて出会ったのは15年ほど前のアヴィニョン演劇祭で、それ以来のファンです。ファンというより、心の大切な宝物という感じかな。パントマイマーと名乗っておられますが、パントマイムというジャンルではくくれない独自の世界をつくりあげる人。どこに惹かれるのか言葉では説明できないけれど、ほかの何にも似ていなくて、観るたびに不思議な気持ちにさせられます。アヴィニョン生まれの小説家アンリ・ボスコのことを教えてくれたのもフサヨさんでした。『シルヴィウス』や『ズボンをはいたロバ』など、ボスコの作品もどのジャンルにも属さない不思議な小説で、これも私の宝物のひとつ。

今回の『うせものいづる』は、洲永さんがフサヨさんから借りた『シカゴ育ち』(スチュアート・ダイベック)という本の中の詩を読みたくなったことから始まった作品だそうです。結果的には芝居のなかで朗読されることはなかったのですが、きっといい小説なんだろうな。読んでみようと思います。

『うせものいづる』
2009年11月20日(金)~23日(月・祝)
会場/ルーサイトギャラリー(東京都台東区柳橋1-28-8)
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by AngeBleu | 2009-11-20 23:26 | 演劇

映画『アンナと過ごした4日間』

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この映画を観ようと思ったのは、ひとえにポスターの写真の美しさに惹かれたから。ヨーロッパのどこかの美術館でこんな絵見たことあるような気がする。冬のさなか、垂れ込めた雲の間から太陽が顔を出し、平凡な田舎町が天国的な光に照らし出さされる瞬間……。しかし、この美しい風景画のような情景が出てくるのは、ほんの15秒くらい。このシーン以外、映画の中に明るい光はなく、物語はすべて曇天の下や夜の暗闇の中で進んでいく。暗く寒々とした映像が、主人公(そして、そこに住むすべての人々)の底なしの孤独を表しているかのようだった。

舞台はポーランドの寒村。冬枯れの農地が広がり、廃屋が目立つ。この村の病院で雑役係として働く中年男レオンは、年老いた祖母とふたりで暮らしている。彼の楽しみは、近くの看護師寮に住むアンナを覗き見することだった。かつてレオンはたまたま目撃した強姦事件の濡れ衣を着せられ、服役していたことがある。実は、アンナはその強姦事件の被害者だったのだ。やがて部屋を覗き見するだけでは飽きたらなくなったレオンは、夜中にこっそり忍び込むという行動に出る。その部屋で彼がしたことといえば、とれかけたボタンをつけたり、寝ている彼女の足にペディキュアを塗ったり、退職金をはたいて買ったダイヤの指輪をはめようとしたり……。寝間着がはだけて彼女の胸があらわになっても、決して触れることはない。ただ息をこらして見つめるだけだ。

行為だけを見れば、かなり気持ち悪いストーカー。でもレオンにはそれよりほかに自分の思いを表現する方法はなかった。非嫡出子として生まれ、祖母に育てられたというレオン。おそらく祖母以外の人とまともな交流などしたこともないまま過ごしてきたのだろう。見た目はむくつけき中年男だが、中身は小さな子供のままなのだ。

アンナについては劇中で何の説明もないが、彼女もまた幸薄い人生を送ってきたことが察せられる。中年とまではいかないが決して若くはない女。看護師寮の殺風景なひとり部屋と病院を往復する毎日。レオンがアンナに惹かれたのも、彼女に自分と同じ深い孤独を見い出したからかもしれない。レオンが置いていった指輪を見つけ、それを指にはめて暗闇の中で物思いにふける、アンナの目の中のさびしげな光。その胸にはどんな思いが去来していたのだろうか。

監督のイエジー・スコリモフスキはアンジェイ・ワイダやロマン・ポランスキーと並ぶポーランドの巨匠だそう。といっても私は全然知らないので、彼の17年ぶりの新作……と聞いてもぴんとこない。でもそんなこととは関係なく、ひとつひとつのシーンが心に落ちてきて、見終わったあといつまでも残るような、いい映画だった。

「アンナと過ごした4日間」の映画詳細、映画館情報はこちら >>
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by AngeBleu | 2009-11-15 15:41 | 映画

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