人気ブログランキング | 話題のタグを見る

若桑みどり『女性画家列伝』を読んでから、ずっと畏敬の念を抱いていたケーテ・コルヴィッツの美術館
にやっと行くことができました。

ケーテ・コルヴィッツは、1867年、ドイツに生まれ、二度の世界大戦を生き抜いた画家。ここ、ベルリンの美術館には、『農民戦争』『カール・リープクネヒト追悼』など、ほとんどの代表作が展示されています。訪れる人もあまりいないので、心ゆくまで作品と向き合うことができました。

特に心を打たれたのは、“母”を描いたリトグラフや彫刻です。全身で子どもを抱きかかえて守る母。死んだ子を抱いて静かに嘆く母。人間の尊厳をこれほどまでに強く美しく表現する作品に出合ったのは初めてです。

20代から晩年近くまでの自画像十数点を集めた部屋も圧巻でした。若いときの彼女は女らしい笑みを浮かべていますが、いつしかその顔から女らしさの痕跡は消えていきます。老齢に達した頃の顔は、もう性別さえ明らかではありません。そこに描かれているのは、ただ真実のみをみすえる強い意志を持つ「人間」です。
これからもベルリンに来るたびに訪れたい美術館です。

ベルリンの旅 \'08 12月(10)ケーテ・コルヴィッツ美術館_b0163474_13253749.jpgベルリンの旅 \'08 12月(10)ケーテ・コルヴィッツ美術館_b0163474_13243812.jpg

美術館は、UバーンUhlandstr.駅を降り、クーダムからFasanenstr.を少し入ったところ。

宮本百合子の『ケーテ・コルヴィッツの画業』がインターネットの電子図書館、青空文庫で読めます。ナチスの迫害のもとに過ごす晩年のケーテを、戦時下の日本に生きる百合子が思いやって書いた文章です。60年も前に書かれた評伝ですが、今読んでも胸に迫ってくるものがあります。戦時中の日本にもこんなに明晰な知性をもった女性がいたのだなあ。
# by AngeBleu | 2008-12-15 23:11 | ベルリン'08 12月

ベルリンの旅 \'08 12月(9)ベルリン国立歌劇場 マラーホフ『カラヴァッジョ』_b0163474_18322028.jpg

「マラーホフ、ベルリン国立歌劇場芸術監督に就任」。2002年にそのニュースを聞いたとき、喜ばしく思ったと同時に、彼が踊りをやめる日が近づいたのではないかと危惧した。彼はその後も、以前と変わらぬペースで来日してくれたが、その踊りはどこか精細を欠き、ときには疲れを感じさせるものとなっていた。「永遠の少年」「永遠の王子様」だと思っていたマラーホフも、もう40歳。かつてのように、「この世のものならぬ」オーラで私たちを幻惑してくれることはもうないのだろうか……。

そういうわけで、あまり期待せずに出かけた『カラヴァッジョ』。「実はあまり出番ないんじゃないの?」「踊りより演技の部分のほうが多いのでは?」……なんて思っていたが……。うれしいことに、それは無用の心配だった! マラーホフほぼ出ずっぱりだし、彼の肉体美を最大限引き出す振付がすばらしい。王子様でも少年でもない、新たなマラーホフの出発を感じさせる舞台だった。

バイセクシャルで、恋人の男性を殺し、逃亡の果てに38歳で生涯を閉じた画家カラッヴァジオ。この画家の孤独でナイーブな魂を演ずるのに、今のマラーホフほどふさわしい人はいないだろう(ただし、カラヴァッジオがバイセクシャルという史実はなく、このストーリーは多分にデレク・ジャーマンの映画『カラヴァッジョ』の影響を受けているようだ)。闇の中に浮かび上がるひとつひとつのポーズの美しさ、男性とのパ・ド・ドゥの悲痛なエロティシズム……。まさにマラーホフにしか表現できない世界。

ポリーナ・セミオノワの貫禄にも驚いた。マラーホフが初めて日本に連れてきたときは、まだ幼さが抜けない少女という感じだったのだが……。5年もたたないうちにこんなに強靱な表現力をもつダンサーに成長するなんて。今一番注目したい女性ダンサーだ。

ベルリンの旅 \'08 12月(9)ベルリン国立歌劇場 マラーホフ『カラヴァッジョ』_b0163474_183237100.jpg
すっかり役に入り込んでしまったマラーホフ。カーテンコールのときも、“あっち側”にいってしまった表情のままだった。

※4月16日、19日、23日にも公演があります。お見逃しなく!
# by AngeBleu | 2008-12-14 20:28 | ベルリン'08 12月

ドイツのおみやげといえばやっぱりバウムクーヘン。でも前回の旅行では買えなかったのだ。ドイツならどのお菓子屋さんでも売ってるはず……って思ってたら、そうでもないみたい。今回は、日本でしっかり調べてきた。

ベルリンにバウムクーヘンで有名な店はふたつ。「ラビーン」と「ブッフヴァルト」。ガイドのMさんによればラビーンのバウムクーヘンなら誰にあげても好評とのことだが、お店はガイドブックに付いている地図からはみ出すほどの郊外……。なので、比較的行きやすいブッフヴァルトに行くことにした。

ベルリンの旅 \'08年12月(8)バウムクーヘンを買いに行く_b0163474_1362035.jpg
ベルリンの旅 \'08年12月(8)バウムクーヘンを買いに行く_b0163474_13637100.jpg

「ブッフヴァルト」は、SバーンのBellevue駅を降りてすぐの川沿いにある。ショーウインドーに大小のバウムクーヘンが飾られているのですぐにわかった。配りみやげ用に一番小さなバウムクーヘンをいくつか買ったあと、奥に感じのよさそうなサロン・ド・テがあることに気づいたので、入ってみることにした。

壁紙や調度品などなんとも古めかしくて、おばあちゃんの家のサロンのよう。とても落ち着ける雰囲気だ。

ベルリンの旅 \'08年12月(8)バウムクーヘンを買いに行く_b0163474_1365513.jpg

左は、チョコレートケーキではなく、チョコレートでコーティングしたバウムクーヘン。なかなかおいしかった。右は、レモンケーキ。こちらはあんまり……
# by AngeBleu | 2008-12-13 22:02 | ベルリン'08 12月

ベルリンの旅  \'08 12月(7)ティーレマン指揮 ベルリンフィル『ブルックナー8番』_b0163474_1046442.jpg

ブルックナーの交響曲の中で一番好きな「第8番」。いつか生で聴きたいなあと思っていたが、まさか初の「生ブル8」が、ベルリンフィルになるとは!! 苦労の末インターネット予約が完了したときは、相棒と手を取り合って震えた(笑)。

初日のせいか、演奏者も観客も張り詰めた雰囲気。ヨーロッパのコンサートホールでこんなに緊張した空気を感じることはあまりないように思う。
最初の弦のトレモロが始まったときから、うねるような流れの中に一気に引き込まれてしまった。CDでは絶対に聴けないような、弦の弱音の美しさに鳥肌が立ちっぱなし。何十人もで演奏しているのに、ただ1本の細い絹糸が震えるているように聞こえたり・・・・・・。
ただ、細部の美しさに聴き惚れるあまり、全体像があいまいになってしまったような気がする。ステンドグラスの一片一片の色に見とれて、何の物語が描かれていたのかを見逃したようなものだ。できることなら、次の日の演奏も聴いてみたかった。
# by AngeBleu | 2008-12-12 19:44 | ベルリン'08 12月

「ちょっと変わったベルリンツアー」、最後に訪れたのは、さきほどの巨大団地からトラムでわずか2駅のところにある“村”、アルト・マルツァーン。なんでも13世紀からの歴史があるという村で、石畳の道や古い教会が昔の姿のまま残っている。コンクリートジャングルに囲まれて、こんなに牧歌的な場所があるのがおもしろい。

ベルリンの旅 \'08 12月(6)アルト・マルツァーン_b0163474_16215052.jpg
ベルリンの旅 \'08 12月(6)アルト・マルツァーン_b0163474_16231912.jpg


小高い丘の上には風車が建ち、そのふもとの小さな観光牧場では、羊や馬、鶏が飼われている。なんとものどかだ。

ベルリンの旅 \'08 12月(6)アルト・マルツァーン_b0163474_1624541.jpg
ベルリンの旅 \'08 12月(6)アルト・マルツァーン_b0163474_16231241.jpg


時計を見ると、もう13時。アルト・マルツァーンでただ1軒のレストランで昼食をとることにする。東ベルリンの雰囲気が残るとても感じのいいレストラン。平日なのに結構にぎわっていた。もちろん外国人観光客の姿はなく、地元の人ばかりだ。

ベルリンの旅 \'08 12月(6)アルト・マルツァーン_b0163474_16252098.jpg
ベルリンの旅 \'08 12月(6)アルト・マルツァーン_b0163474_16302592.jpg


レストランでベルリン料理を食べるのはこれがはじめて。前菜にオニオンスープ、メインに、一度食べてみたかったロールキャベツを注文。予想通りすごいボリューム。ふたりで一皿を分け合ってちょうどよい量だった(隣に座っていた年配のご婦人は、同じようなボリュームのアイスバインをひとりで完食していた。生まれながらに胃の大きさが違うのか・・・)。

食事を終えて、ベルリン中心部に戻ってきた頃には、16時近くになっていた。空はもう薄暗くなっている。4時間のツアーの約束だったのに、大幅に時間をオーバーしてしまった。Masatoさん、ごめんなさい。そして、ありがとうございました。自分たちでは絶対に行くことができない場所に案内していただいて、本当に感謝しています。
# by AngeBleu | 2008-12-11 23:22 | ベルリン'08 12月