Trans Europe Express


フランス、ドイツなどヨーロッパの旅の話題を中心に、映画、音楽、ダンス、アート鑑賞記録も。
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東京バレエ団『M』(12月18日)

ベジャールが三島由紀夫の作品と人生に想を得て創作した東京バレエ団オリジナル作品『M』が5年ぶりに再演されました。実は私はこの作品を観るのは初めて。ベジャール、ミシマ、どちらも苦手なもので、避けていたんですよね……。しかし、今回は、初演で“IV(シ)”を踊った小林十市さんが7年ぶりに一度限りのダンサー復帰を果たすと聞き、観に行かずにはいられなくなりました。

『くるみ割り人形』での猫のフェリックスの軽々とした跳躍、『バレエ・フォー・ライフ』のギラギラエロスな世界の中で際だつ透明感あふれる踊り。小林さんの舞台を観た経験は数えるほどしかありませんが、その姿は鮮やかに心に焼き付いています。そして、今回の『M』。また新しい小林さんの姿が胸に刻みつけられました。東京バレエ団のプリンシパル揃い踏みの舞台だったのに、気が付けば小林さんしか見ていない……。なんと言えばいいのでしょう? 踊り進むにつれて、年齢も性別も超えた存在になっていくようなのです……。まさに「シ(死)」そのもの。小林さんの復帰がこの舞台(18日と19日のたった2日間)限りなのはとても残念ですが、この役を演じきってダンサー人生を終えることができたのは彼にとって幸せなことではないでしょうか。そしてそれを見ることができた観客にとっても……。

作品のほうは、三島由起夫論というより、三島をとおしてベジャール自身の、美と永遠なるものへの憧れを表現したもの。まったくエロティックでない日本人ダンサーの体が醸し出す静謐な美の世界はベジャール作品の中でも異色で、私には好もしく思われました。

さて、三島由紀夫について。没後40周年と聞いても何の感慨もわかなかった私ですが、『M』を観たらさすがにさまざまに思いをはせずにいられません。女性嫌悪の通奏低音、肉体改造、楯の会……などなど、生理的にイヤだな~と思える部分は多々あるものの、実は憎みきれない人でもあります。春日井建の処女歌集の序文や、紅顔の美少年との切腹ごっこのエピソード、そのほか、多くの愛人たちが暴露したやさしく気弱な面などを知るにつけ、いとおしさが増します。もちろん小説のおもしろさもピカイチ。今、部屋の本棚にたまたまあった短編集、『殉教』を読んでいますが、本当にうっとりするほどの美しさ、巧みさ。まだ読んでいないものを含めて、いろいろな作品を読み返してみたいです。
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by AngeBleu | 2010-12-20 23:05 | バレエ

オルハン・パムク『雪』

オルハン・パムクの『雪』を読み終えた。パムク最初で最後の政治小説……というので、ちょっと身構えていたが、「雪の静寂だと考えていた」という冒頭の一節から、魔法にかかったようにぐんぐんと小説の世界に引き込まれた。超絶技巧、とでもいいたくなるような文体は、『わたしの名は紅』と同じか、それ以上かもしれない。

この世の果てのようにさびしい辺境の町、カルスに降り続ける雪。4年間詩を書けなかった詩人の元に、突如降りてきた詩。すべての人々がひとつひとつ持っている雪の結晶。そうしたものすべてを作り出した「神」の存在……。さまざまなイメージが雪のように、しずかに心に降り積もっていく。何という美しさ。同時に、美しい雪の下に隠された、トルコの、カルスの町の過酷な歴史、人々の苦悩、孤独に、胸が押しつぶされそうになる。

『わたしの名は紅』でも、東西文明のはざまで苦悩する人々が描かれていたが、それは私にとって遠い昔の遠い国の出来事に過ぎず、ひたすら物語の世界に陶酔していればよかった。しかし、『雪』で描かれている人々の苦悩は、まさに今、世界のどこかで現実に存在しているもの。ただ心地よく酔っているわけにはいかない。

トルコではイスラム教徒が大半を占めるにもかかわらず、大学で女子学生がスカーフを着用したまま授業を受けることが禁止されているという。それほど徹底した政教分離の国だということに驚いた。トルコやイスラムについて何も知らなかったことを思い知らされた。知らず知らずのうちに「イスラム主義=旧弊、悪」、「世俗主義=正義、自由」という単純な考え方が染みついていたようにも思う。自分の無知、無関心を恥じるばかりだ。でも、この小説を読んだから、何かが理解できるようになったというわけではない。登場人物のひとりは、語り手「わたし=パムク」に向かって言うのだ。
「カルスを舞台にする小説に俺を入れるなら、俺たちについてあんたが話したことを読者に信じてほしくないと言いたい。遠くからは誰も俺たちのことをわかりはしない」

図書館に『雪』を返したあと、『イスタンブール』を借りてきた。パムクの子供時代とイスタンブールについてのエッセイ。まだ読んでいないけれど、本文のところどころに挿まれたモノクロームのイスタンブールの風景を見るだけで涙がでてきそう。
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by AngeBleu | 2010-03-05 22:05 | 読書

『素顔のベルリン 過去と未来が交錯する12のエリアガイド』(中村真人著)

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ベルリン在住のフリーライター、中村真人さんの著書『素顔のベルリン』(ダイヤモンド・ビック社)が刊行され、発売日の今日、早速手に入れました。

中村真人(Masato)さんは、昨年末のベルリン旅行のときにお世話になったガイドさんで、ブログ「ベルリン中央駅」の作者でもあります。ベルリンに興味を持って以来、ずっとMasatoさんのブログのファンだったのですが、このたびの出版で、ネット上だけでなく、書籍という形でMasatoさんの文章が読めるようになったのは本当にうれしいことです。

ちょっと中身をのぞいてみたい人は「地球の歩き方ホームページ」の新刊情報ページをご覧ください。

これは画期的なベルリンガイドブックだと思います。いわゆる有名観光地にとどまらず、ふつうの旅行者はまず行かないような地区(フリードリヒスハイン、クロイツベルク、ノイケルンなど)についてもかなり詳しく書かれています。ベルリンをすみずみまで知り尽くした人にしか書けない、まさに「素顔のベルリン」というタイトルにふさわしい本です。紹介されているカフェやレストランも、ベルリンっ子が日常的に利用しているような店ばかり。写真も雰囲気のある美しい写真が多くて、旅心をそそられます。早くこの本を持ってベルリン散歩してみたいなあ(いつになることやら・・・)。あと、ベルリンの数奇な歴史についてのコラムも充実していて、単なる旅行ガイド以上の「読み物」として価値がある本だと思います。

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裏表紙はこんな感じ。この写真だけも、今までのベルリンガイドとはまったく違うことがわかります。

来月11月9日は、壁崩壊20周年の記念の日。そのイベントを目当てにベルリンを訪れる人も多いでしょう。ぜひこの本を片手に、奥深いベルリンに触れてみてほしいと思います。
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by AngeBleu | 2009-10-03 22:08 | ベルリン点景

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