2008年 12月 22日
ドレスデン(4)パルミジャニーノ『薔薇の聖母』
パルミジャニーノ『薔薇の聖母』。
しかしこれは本当に聖母なのでしょうか? 非常に美人ですが、その表情はこちらの心が凍り付くほど冷たく、薄衣の下には、聖母にあるまじきなまめかしい肢体。顔の無表情とはうらはらに、手は実に表情豊かで優美です。今にも動き出して我が子の性器に触れるのではないかと思われるほど……。
イエスがまた問題ですね。幼子というより、5、6歳にはなっていそうです。鑑賞者のほうをじっと見つめていますが、とても未来の救世主には見えず、まるで誘惑者のような顔つきです。彼が右手で掲げる赤い薔薇は決して「殉教」のシンボルなどではなく、ずばり「快楽」を表しているのでは?
今見てもかなりきわどいこの絵、当時の人は、果たしてこれを聖母子像として見ることができたのでしょうか。
ラファエロの『システィーナの聖母』が描かれたのが1513年頃。この『薔薇の聖母』は、1527〜1531年頃の作品とされていますから、15年ほどの差しかありません。そのわずかの間に、聖母マリアがここまで地に落とされてしまったのか……と、戦慄を感じます。