Trans Europe Express


フランス、ドイツなどヨーロッパの旅の話題を中心に、映画、音楽、ダンス、アート鑑賞記録も。
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知られざるフランスの美術館(3)ピエール・ド・リュクサンブール美術館(ヴィルヌーヴ・レザヴィニョン)

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アヴィニョンとローヌ川をへだてた隣町がヴィルヌーヴ・レザヴィニョン。
14世紀、アヴィニョンが教皇の町だった頃、ここは裕福な聖職者たちが住む町でした。高級住宅地であることは今も変わらないようで、庶民的なアヴィニョンとは正反対の、落ち着いた街並みが魅力です。ジャン・アレジの実家もここにあると聞いたことがあります。

小さな町ながら見どころは多く、フィリップ美男王の塔、サンタンドレ要塞は、どちらもアヴィニョンの街並みが望める絶好の眺望ポイント。そして、美術史好きなら見逃せないのが、ピエール・ド・リュクサンブール美術館 Musee Pierre de Luxembourg です。ここには、アヴィニョン派絵画の傑作『聖母戴冠』があり、この1枚を見るためだけでも行く価値のある美術館です。

作者のアンゲラン・カルトンは、フランス北部出身の画家で、1444年からアヴィニョンで活躍しはじめたそうです。15世紀のフランスは、すでにルネサンスの花が咲き誇っていたイタリアに比べると、まだまだ中世のとばりに覆われたままでした。つまり芸術面では完全な後進国だったのです。しかしそんななかで、14世紀以来教皇庁の町として栄えたアヴィニョンには、イタリアや北ヨーロッパから最新の芸術が輸入され、地元フランス人画家との交流により独自の芸術を生み出したのでした。この『聖母戴冠』は、その最大の成果といえるような作品です。

目の覚めるような鮮やかな色彩、堅牢な造形。今生まれたばかりのような輝きを放っていて、中世の絵画であることを忘れてしまいそうです。描かれている情報量も非常に多く、すみずみまで見ていると、1時間くらいはゆうにかかりそう。でも大丈夫。この美術館はいつ行っても空いているので、絵の前で何時間でもゆっくりしていられます。

私が心をひかれるのは、下のほうに描かれている地上の風景が、今も見られるプロヴァンスの風景そのものだということ。地中海や石灰岩の崖(マルセイユのカランク)、プロヴァンスの最高峰ヴァントゥー山。中世の画家も、プロヴァンスの風景を見つめ、美しいと感じていたんだなあと思うと胸が熱くなります。ヴァントゥー山は、セザンヌが描くサント・ヴィクトワール山のように幾何学的に簡略化されていて、アンゲラン・カルトンはセザンヌの遠い先祖なのだという気がします。

アヴィニョン派絵画といえば、ルーヴル美術館にある『ヴィルヌーヴ・レザヴィニョンのピエタ』を思い出す人も多いでしょう。最近まで作者不詳とされていましたが、先日ルーヴル美術館を訪れたときは、『聖母戴冠』と同じアンゲラン・カルトン作と断定されていました。今ではルーヴル美術館の至宝となっているこの絵ですが、19世紀末までヴィルヌーヴ・レザヴィニョンの薄暗い教会の中にあったそうです。その教会L'eglise Collegiale Notre Dameには、今は『ピエタ』の複製が掲げられています。それにしても、こんな宝物がフランスの片田舎の小さな教会に400年以上も眠っていたなんて……。歴史の奇跡を感じずにはいられません。
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by AngeBleu | 2009-08-18 14:22 | 南仏プロヴァンス

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