2008年 12月 10日
ベルリンの旅 '08 12月(5)マルツァーンの巨大集合住宅群
なぜ郊外ばかりに行くのかというと、私が「郊外の集合住宅群を見たい」などと言ったからだ。
ヨーロッパの町の郊外には、必ずといっていいほど、1960年代から1970年代に建てられた集合住宅群がある。殺風景で、無味乾燥で、とても詩情あふれるとはいいがたい風景。なのに、なぜか心ひかれる。どんなに無機質な場所でも、そこに人間が住む限り、なんらかの人間的な匂いが生まれる。私が心ひかれるのは、集合住宅に住む人々なのだ。決して表舞台に出ることのない、ありふれた日常を送る、ありふれた人々(私と同じように)・・・・・・
Masatoさんおすすめの郊外住宅群は、トラムM8でずーっと東へ行った、マルツァーンというベルリン東部の区にある。東独時代、地方や外国から流れ込んできた労働者たち(とその家族)を受け入れるために築かれた団地だ。トラムの車窓からも、巨大なコンクリートの壁のような高層アパートが、数kmに渡ってえんえんと続いているのが眺められる。まさにコンクリートジャングルと呼ぶにふさわしい景観だ。トラムを降りて、1駅分団地を横切って歩いてみた。時間帯のせいもあるのだろうが、これほど大きな団地なのに、ほとんど人影がないので、よけいに超現実的な感じがする。
最近、この団地を舞台にした映画が公開されたそうだ。東西統一20年が過ぎても、まだ統一後の現実になじめないまま生きている人々の日常をたんたんと描いたものだという。とても興味をそそられる。Masatoさんによればかなりの秀作らしいが、残念ながら「あまりにも地味すぎて日本公開はまずないでしょうね」とのこと。
2008年 12月 09日
ベルリンの旅 '08 12月(4)オストクロイツ駅
オストクロイツ駅は、Sバーンの東西線と環状線が立体交差する駅だ。
東西統一から20年経った現在、私のような素人目には、どこが旧東ベルリンで、どこが旧西ベルリンなのか、ほとんど見分けがつかなくなっている。しかし、この駅に来て、ここが“東”であることに気付かない人はいないだろう。古めかしい書体の看板、線路際にそびえる給水塔。駅に降り立ったとたん、あたりの景色がモノクロームに変わったような気がした。
この日は朝から曇っていたが、この駅にいる間、雪がひとしきり強く降った。晴れた日ではなく、こんな寒々とした空の日にこの駅を訪れることができてよかったと思う。
上のプラットホームで、電車を待つ人々。テオ・アンゲロプロスの映画のワンシーンのようだ。
駅のホームでリンゴを売っているのも珍しい。日本のに似た紅くて大きめのリンゴだった。
この駅では現在、大規模な改築計画が進められているそうだ。この趣ある駅の姿が見られるのも、あと数年ということになる。東西統一以来、消えてしまった“東”の風景はどれくらいあるのだろう。そしてこれからも・・・・
2008年 12月 08日
ベルリンの旅 '08 12月(3)郊外のトラムSRS
ベルリンでは、観光名所よりも、何気ない街並みのほうにおもしろさを感じることが多い。前回の旅行で、特に東ベルリンの街並みに惹かれたので、もっといろいろな場所を歩いてみたいと思った。でも、まったく土地勘がない私たちが闇雲に歩くのは難しそうなので、ガイドをお願いすることにしたのだ。
お世話になったMasatoさんは、ベルリン在住のフリーライター。人気のブログベルリン中央駅の筆者でもある。かねてより、彼のブログの中の、ガイドブックにはないベルリンの風景ーー何もない荒涼とした土地や廃墟の寂しい風景ーーに心惹かれていた。Masatoさんには、「郊外の団地など、ベルリンの日常が見られる風景が見たい」という、難しいリクエストをしてしまった。どこに案内したものか、困ったことと思う。それでも、一生懸命考えてくださって、ユニークなベルリンツアーが実現した。
午前9時、アレクサンダープラッツ駅の「世界時計」の前で待ち合わせ。東ベルリンで待ち合わせといえばここ、というくらい有名な場所だとか。『グッバイ・レーニン』にも出てきたというけれど・・・全然記憶にない。
トラム路線図の表紙にも世界時計の写真が。
「トラム好き」の私のために、最初に案内してくださったのは、ベルリン郊外のかわいらしいトラム路線SRS。
まずは、Sバーンでアレクサンダープラッツから20分ほどのFriedrichishagenへ。東独時代の雰囲気が残る古めかしい駅を降りてすぐのところに、「88」のナンバーを付けた小さなトラムが停まっている。ベルリン市内を走っているトラムよりひと回り小さく(特に幅)、おもちゃの電車のようだ。ここから、ちょっとした森の中を通り抜けてAlt-Rudersdorfという村をつないで走る。全長は14km。真冬のことで、車窓風景には特におもしろいものではなかったが、夏は緑が気持ちよく、途中下車してハイキングなどしたくなるかもしれない。市街地だけでなく、こんな郊外でもトラムが走り、いまだに人々の大切な生活の足となっているには驚かされる。運行はきっかり20分ごと。
2008年 12月 07日
ベルリンの旅 '08 12月(2)Atelier Etskoの奈田里と華田里奈
インマヌエル教会通りにある「Atelier Etsko」を訪れた。ふたりの日本人芸術家が、自らの作品を発表するために開いた画廊だ。ベルリン内で2回移転し、現在の場所に画廊をオープンしたのは、2年前のこと。
この日は、クリスマス展と称し、今までここで展覧会を行った作家の作品が一堂に会する特別展が開かれていた。なかでも目をひいたのは、平家物語の文章を書いた「書」というか「カリグラフィー」の連作だ。実は、これ、昨日空港に迎えにきてくれた、高校生のナタリーとカタリナの作品というから驚いてしまった。
アトリエの近所の高校に通うナタリーとカタリナ。もともと日本文化に興味をもっていたが、アトリエに遊びに来るようになってから、学校の勉強もそっちのけで、日本語(特に漢字。「鬱」とか、画数が多ければ多いほどいいらしい)の習得に情熱を燃やすようになった。日本人画家で日本文学にも造詣の深いM氏を師と仰いでいる。2009年には、日本で、ナタリー、カタリナ、M氏の3人展を開く予定なのだとか。
自作の俳句、短歌作品
2008年 12月 06日
ベルリンの旅 '08 12月(1)
利用したエアラインは、KLMオランダ航空。
今回初めての利用で、選んだポイントは、ずばり料金の安さだったが、結果的にはすべてに満足だった。機内食はおいしいし(機内食が完食できたのは初めて)スキポール空港でのシェンゲン入国→乗り継ぎの流れもスムーズ(やたらストレスがたまるパリCDG空港とは大違い)、フライングブルーのマイルも貯まるし(今回のフライトで日本ーヨーロッパ往復に必要な8万マイル達成!)、今後ヨーロッパに行くときも、KLMにしたいと思う。
コンビニのお総菜パック風でなかなかおいしかった
ベルリン・テーゲル空港では、相棒のお父さんでベルリン在住の芸術家M氏、そして、かわいらしいドイツ人女子高校生二人組、ナタリーとカタリナが出迎えてくれた。ナタリーのお父さんの車に乗せていただき、ベルリン市内へと向かう。もう20時だから、あたりは真っ暗だ。
ベルリンの夜は、首都と思えないほど暗い。ライトアップされているモニュメントはほとんどなく、派手派手しいネオンの看板もない。ただ、家々の窓から漏れるほのかな灯りだけが、そこにあたたかな人々の生活があることを感じさせる。
ベルリンの夜の暗さは、なぜか、私をほっとさせてくれる。
ベルリンで泊まったホテル「Alex」